伊藤尚子作品


伊藤尚子 /  Naoko Ito

『Moon ladyのご機嫌な午前2時』

台(膳)兼 装飾パネル(壁面展示用)
49×35×3cm
素材;木(栃)、漆、螺鈿


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伊藤尚子のコラム
 1

「ビュランと蒔絵筆・工房の午後」

 

私は現在、版画と漆芸で作品制作をしています。
多分、その組み合わせで制作している作家は、かなり珍しいかも知れません。
私は京都市立芸大で漆芸を専攻しました。
染織をするつもりで入学したものの、陶芸、染織、漆芸を一通りやってみて、他に置き換え様のない漆の深い黒が、自分の表現したい世界であることに気づき、方向転換しました。ただ、当時(1970年代)漆芸はまだ旧態然とした世界で、個展をご覧になった漆の大家の方に「君は漆を舐めているのか?!」と罵倒されたこと等あり、理不尽さに、少し漆や京都に距離を置きたいと思い始めました。
その頃偶然に書店で手に取った、装丁家栃折久美子さんの「モロッコ革の本」というベルギー留学記が、その時の私の気持ちにぴったり来て栃折さんに連絡、東京まで会いに行きました。(私は当時若気の至りで、本や作品に感動すると作者に会いにいくという無謀なことを度々していました。何となく皆さんに運良く受け入れられてはいましたが)。
そして栃折さんの紹介で、ブリュッセルの国立高等建築・視覚芸術大学を受験。
たまたま野外彫刻展で見た彫刻家のRoulin氏の作品に感動し、彼のクラスに入学。
金属鋳造で、作品制作を始めました。
1時間かけて灰皿を定義するような概念論等の今更な授業はさぼり、隣の版画教室、ルリュール(西洋造本術;栃折さんが学んだ)教室にもぐりで受講し、夜はまた別のオランダ語系の美術学校にも通いました。
考えれば、当時からかなりゆきあたりばったりな方向転換の連続でした。帰国後、漆会社のデザイナーから35歳で突然、新設された近畿大学文芸学部の版画教師になったのも含め、全て結果的に偶然ではなく必然の重なりだったと今になっては思いますし、幸せな人や物との出会いが現在を導いてくれたと思ってもいます。(続く)

(作品・文 伊藤尚子)




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伊藤 尚子
Naoko Ito 


略歴
1954年京都生まれ
1977年
京都市立芸術大学美術学部、塗装(漆工)科卒業
1979年
同大学同学部同科専攻科修了
ベルギー国立高等建築視覚芸術大学金属彫刻科
ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DES ARTS VISUELS ET D'ARCHITECTURE 及び、
王立美術学院彫刻科 RIJEKS CENTRUM HOGER KUNSTON DERWIJKS BRUSSELS 留学 (ロータリー財団奨学生)
1982年
京都市立芸術大学美術学部漆工科非常勤講師
1984年
象彦漆器(株)デザイン室デザイナー
1990年
近畿大学文芸学部芸術学科造形芸術専攻教授(2020年3月退職)
2020年現在
・日本版画協会会員・ 版画京都展実行委員会会員
・Japan Art Medal Association会員・International Art Medal Federation会員
・神戸、京都、大阪、東京、パリ、ブリュッセル等にて個展39回開催


 


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