月隠りの夜に台兼パネル


伊藤尚子 /  Naoko Ito

月隠りの夜に (Par une nuit sans lune)

台(膳)兼 装飾パネル(壁面展示用)
直径32cm、厚み3cm

素材
木、漆、螺鈿

お求めはこちら

 


 

伊藤尚子のコラム
2

 

ベルギー国立高等建築・視覚芸術大学金属彫刻科と
王立美術学院彫刻科への留学で得たもの (1)


 

ブリュッセルの芸術大学は、入試から日本とは少し違っていました。

日本の芸大ですでに学んでいる私のデッサンを見た試験官の先生が、「あ、もう君いいわ、それだけ描けたら。一緒にカフェテリア行って、コーヒータイムにしようか」と。

構想表現課題になると、壁に新聞紙をぺたぺた貼ってドローイングする人、庭に出て拾ってきた枝で何か作る人。
試験官が制作途中の作品にコメントし、受験生がそれに対して大反論。
「じゃあ、一緒にカフェテリア行って、議論しよう」と試験官。

でもまあ、その子も私も無事合格。窪地に建つ旧ラカンブル修道院の建物をそのまま利用した美しい建物で、私の留学生活が始まりました。そして入るなり私は(5年制の後期)4年生に飛び級しました。

私は、ラオコーン像の様な威容のFelix ROULIN氏の彫刻ゼミに。
彼は、気に入らないと作品を台から叩き落とすは、情け容赦なく酷評するはで、
1年後には10人居た新入生が続々脱落。
私を含めたメンタルが多少若者より強めの、年嵩3人だけになっていました。

週末には先生の田舎にある巨大な工房で、大学の設備では学べないブロンズ鋳造の実際を体験に行ったりして、実技のノウハウも勿論学んでいましたが、それよりまず第一に、徹底的に論じることを強いられました。そこを通過してFelixを論破しないと先に進めません。

ですので、外国人の私にはハードでしたが、お陰で、日本語ではディベートが苦手な私が、フランス語だと3回に1回は論破できるようになっていました。

ハードな日々ではありましたが、ベルギーはカトリックの祭日の休みが多く、ヨーロッパの国々は日本で他県に行く程度の気楽さで旅行できることもあり、休暇中は各地の美術館を廻りました。各地で路上似顔絵描きをすることで、旅行費はほぼ賄えました。(続く)


(作品・文 伊藤尚子)



伊藤尚子さん コラム 1 はこちら


 


伊藤 尚子
Naoko Ito 


略歴
1954年京都生まれ
1977年
京都市立芸術大学美術学部、塗装(漆工)科卒業
1979年
同大学同学部同科専攻科修了
ベルギー国立高等建築視覚芸術大学金属彫刻科
ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DES ARTS VISUELS ET D'ARCHITECTURE 及び、
王立美術学院彫刻科 RIJEKS CENTRUM HOGER KUNSTON DERWIJKS BRUSSELS 留学 (ロータリー財団奨学生)
1982年
京都市立芸術大学美術学部漆工科非常勤講師
1984年
象彦漆器(株)デザイン室デザイナー
1990年
近畿大学文芸学部芸術学科造形芸術専攻教授(2020年3月退職)
2020年現在
・日本版画協会会員・ 版画京都展実行委員会会員
・Japan Art Medal Association会員・International Art Medal Federation会員
・神戸、京都、大阪、東京、パリ、ブリュッセル等にて個展39回開催


 


ワイアートギャラリーでは
伊藤尚子さんの作品を販売しております。

作品掲載ページはこちら


 
  • “新入荷作品”
  • 林千絵コラムしおさい日記版画集
  • 小池結衣のコラムぶれる日々