日曜の朝はジューデュバル広場へ


伊藤尚子 /  Naoko Ito

 
『日曜の朝はジューデュバル広場へ』

(ジューデュバル広場はブリュッセル南駅から徒歩15ほどの
マルロ地区にある庶民的な蚤の市の会場)

銅版画
イメージサイズ 28.5×37cm
シートサイズ 34.7×42.2cm
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伊藤尚子のコラム
3

 

ベルギー国立高等建築・視覚芸術大学金属彫刻科と
王立美術学院彫刻科への留学で得たもの (2)


 

留学からほぼ20年後に私は近畿大学の教員となり、ベルギーの母校やアメリカ(フィラデルフィア)の芸大の学生達とワークショップをし合同で作品を作るために、学生達を連れて互いに行き来しましたが、その際のベルギーとアメリカの教師の指導方法の違いを、面白く感じました。

まずベルギーの母校は、黒板に問題点を列記し、徹底的に結論がでるまで議論します。予定日数の半分以上が議論で費やされました。そのあとは凄まじい集中力で長時間の制作。

アメリカは、まずテーマに関係のある(膨らませ得る)場所、施設を見学。街や学校の中を廻って素材を探す。いつの間にか制作に入り、途中どんどん変わっていく。

どちらも、近畿大学の学生には新鮮かつ戸惑うやり方だったと思います。

私の留学時、両親がアウシュビッツから生還した友人、アフリカの内戦に巻き込まれて、夫と息子が目の前で射殺された年上の友人、ペルーの藤森政権下亡命してきて、お母様が生死の境に居ても帰国できなかった友人。

そういう人たちが周りに普通に沢山居たり、私が奨学金を頂いていたロータリー財団のカウンセラーのご夫妻の住むお城には地下牢があって20世紀初頭まで使われていたり、陽だまりの様な日本で生活していた私には想像できない世界が広がっていました。

自分もアパルトマンの大家夫妻に実は人種差別をされていることも、能天気にもご夫妻の会話を偶然聞くまで気づきませんでした。(その後帰国時には涙ぐんでハグして頂き、理解して頂けましたが)。

私と一緒に海外ワークショップに行った学生たちの中の数人は、その後あちこちの国に住んでいます。私自身がベルギーで人生が大きく変わり、私繋がりで違う世界を選んだ人たちが居ることを、今感慨深く思っています。(続く)

 

(作品・文 伊藤尚子)



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伊藤 尚子
Naoko Ito 


略歴
1954年京都生まれ
1977年
京都市立芸術大学美術学部、塗装(漆工)科卒業
1979年
同大学同学部同科専攻科修了
ベルギー国立高等建築視覚芸術大学金属彫刻科
ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DES ARTS VISUELS ET D'ARCHITECTURE 及び、
王立美術学院彫刻科 RIJEKS CENTRUM HOGER KUNSTON DERWIJKS BRUSSELS 留学 (ロータリー財団奨学生)
1982年
京都市立芸術大学美術学部漆工科非常勤講師
1984年
象彦漆器(株)デザイン室デザイナー
1990年
近畿大学文芸学部芸術学科造形芸術専攻教授(2020年3月退職)
2020年現在
・日本版画協会会員・ 版画京都展実行委員会会員
・Japan Art Medal Association会員・International Art Medal Federation会員
・神戸、京都、大阪、東京、パリ、ブリュッセル等にて個展39回開催


 


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