林千絵しおさい日記5
 

林 千絵のコラム 
しおさい日記



第五話 

公園の木の下には


 

林千絵木口木版画作品


 

小さい頃住んでいた家の裏には広い公園があって、
桜やブナ、楠などの大ぶりの木がたくさん植えられていました。
私は雨の日以外はほとんど毎日その公園へ行き、よい枝ぶりの木を見つけては登り、
腰かけて長い時間をそこで過ごしました。

 

枝に腰掛けながら上を見上げると、晴れた日は明るい陽の光が葉と葉のあいだでチカチカと砕けては降り注ぎ、通り過ぎる風に揺らされた枝や葉のささやきが聞こえました。
 

「おかあさんから生まれるずっと前のことを思い出してしまいそうだな」
 

その音を聞いているといつも懐かしいような怖いような気持ちになってそんなことを思うのでした。
 

たくさんある木のなかでも私の一番のお気に入りは大きな楠で、その根元には大切な宝物―石ころや鳥の羽根、どんぐり、猫のひげ、などを埋めて隠していました。なぜ大切なものを埋めてしまったのか今では少し不思議に思いますが、自分だけの「ひみつ」にすることで、宝物たちは暗い土の中で星のようにキラキラと輝きはじめました。
 

この話をすると大抵の大人は「実は自分も同じようなことをしていた」と告白し出すのです。
 

世界中の公園の木の根元には子供たちの宝物が埋まっているのかもしれませんね。


 

(文・木口木版 林  千絵)

 



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林千絵のコラム しおさい日記「第3話」 


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しおさい日記4


 



林 千絵
Chie Hayashi


小説や詩など文学に触発された作品が多数あります。
また、現実と夢の狭間に浮かぶ遠い記憶をたぐり寄せて作品にしています。
木口木版を中心に水彩画など2007年より制作発表。
東京、神戸、大阪を中心に個展、グループ展、
美術館企画展などに多数参加しています。


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