小池結衣のコラム
「ぶれる日々」
ぶれず迷わず潔い。
若い時はこれがかっこよかった。
しかしこれは時に、
反省しない、視野が狭い、思考停止、を意味する。
ぶれて迷って往生際悪く生きるのも悪くない。
第10回
「繊細すぎる」
「水辺」
メゾチント
イメージサイズ 175×145mm
シートサイズ 295×228mm
ed.20 2024年
シート税込¥16,500
こちらをクリックで
作品をお求めいただけます。
第10回
「繊細すぎる」
うかつにも、最近になって知りました。どうやら私はいわゆる「繊細さん」。
繊細さんとはHSP( highly sensitive person )、感覚が敏感で、ものごとを深く考える、共感力が強いなどの特徴があり、2割くらいの人を指すようです。よくご存じの方なら、私の文章を読んで既にお気づきだったかも。二十数項目あるチェックリストの、ほぼ全てに強くあてはまってしまいました。
おかしいとは思ってました。例えば、パニック映画。みなさんどうして平気で見られるのでしょう?人が大勢亡くなるようなとんでもない状況。最終的に主人公は助かり、危機は去ってハッピーエンド?大勢亡くなりましたよね?背景みたいに簡単に殺されたけど、その一人ひとりの人生の重みは、主人公のものと同じですよね?それぞれ家族も夢もある、かけがえのない人が殺されましたよね?そこをスルーしてめでたしめでたし?サスペンスもののシリーズも釈然としません。エンターテインメントが成立する前提として毎回毎回人が殺される違和感。そして人が人を殺めるにまで至った心理を、その生い立ちや社会のひずみなど深く考察するでもなく、犯人はお前だ!と指弾して薄っぺらい動機を語らせ、お縄が掛かって一件落着。一体それでいいのでしょうか。
食事をするのさえ、ややこしい。ちりめんじゃこに紛れた蛸だの鰈だの見つけては、稚魚の1匹1匹が気になりだして、いや、それを言うならタラコの一粒一粒さえ…稚魚がふ化するドキュメンタリー映像の、身体を細かく震わせながらこの世に出てくるその美しい銀色の目玉や愛らしい口元なども目に浮かび…乳酸菌や納豆菌のたぐいは肉眼で見えないから勘弁してもらうとしても(いや待て、記憶にはないがこの私もはじめは肉眼で見えない1個の細胞ではあったが)、このちいさな1匹1匹の命は、私のと同じ重みのはずだ、私のような取るに足りない者がこんな風にまとめて食べてしまってよいものか?人間は高等動物?それは差別する側の都合の良い一方的な論理ではないのか?考えても仕方のないことを考える一方で、ヴィーガンや菜食主義の人々を深く尊敬しつつ、自分は貧血がひどいからと魚も肉も食べ、結局食べるのだったらクリスチャンのように「我々のために神がお与えになったもの」と開き直ればよいものを、いらぬ事を考えぬためにもやはり人間には信仰が必要なのか?けれども宗教が互いにいがみ合ったり戦争したりしている限り特定の宗教を信仰する気にはなれない、などと無駄に話を広げてややこしくしては、食欲に勝てず相変わらず肉食をする。これだから、私には生産性も、一貫性もないのです。
他人の悪口を聞けば、悪口を言う側と言われた側の双方に共感してぐったり疲れ切ってしまい。
先日はせっかくネズミ捕りにかかったネズミの、小さな金属の檻に捕えられたその孤独と絶望にうっかり共感してしまい、手順通り水に沈めて溺死させることができず、かと言って逃がせば近所迷惑で、飼育という事さえ頭をよぎり…結局何もできないまま、数日後におそらく脱水で、溺死よりも残酷かもしれない死なせ方をしました。
繊細さんと名前がついてやっと自覚できましたが、考えてみれば人それぞれものごとの感じ方が違うのは当たり前、パニック映画など見れば何週間もひどい気持ちを引きずる私のような人間もいれば、主人公にだけ共感して楽しく見られる人もいるのはそもそも当然の事なのでしょう。
私のような無能の意志薄弱と一緒にはできませんが、きっとこの人も、この世界に生きるには繊細過ぎて、結局死を選ぶことになってしまったのだなあと思う今日この頃です。
大漁 金子みすゞ
朝焼け小焼けだ
大漁だ。
大羽鰮の
大漁だ。
濱は祭りの
やうだけど
海のなかでは
何萬の
鰮のとむらひ
するだらう。
(版画作品と文. 小池結衣)
ワイアートギャラリーのonline shopでは
小池結衣さんのメゾチント作品を
掲載、販売しております。
こちらをクリックしてご覧願います。
ARTISTS
- アルフォンス・イノウエ
- 浅野 信二
- 青山 幸代
- 市川 伸彦
- 伊藤 尚子
- 伊豫田 晃一
- 岩本 将弥
- オーガベン
- 大森 弘之
- 大亦 みゆき
- 小川 香織
- 可南
- 亀井 三千代
- 川嶋 陽介
- 久保 貴之
- 桑原 聖美
- 小池 結衣
- 小泉 孝司
- 小林 宏至
- 駒井 哲郎
- 近藤 幸
- 齋藤 修
- 齋藤 僚太
- 坂上 アキ子
- さかの 依
- 櫻井 萌香
- 佐藤 賀奈子
- 佐藤 妙子
- 佐藤 T
- 重藤 裕子
- 下山 明花
- 謝敷 ゆうり
- 庄 漫
- 白野 有
- 真条 彩華
- 新宅 和音
- 多賀 新
- 高田 美苗
- 高橋 亜弓
- 鷹塀 三奈
- 高根沢 晋也
- 高松 潤一郎
- 高松 ヨク
- 田中 靜
- 寺澤 智恵子
- Toru Nogawa
- 富樫 尚美
- 豊田 泰弘
- 豊永 侑希
- 中嶋 清八
- 長野 順子
- 成田 朱希
- 二階 武宏
- 沼尾 雅代
- 西村 沙由里
- 野嶋 革
- 林 千絵
- 林 由紀子
- 坂東 壯一
- 平野 有花
- 平林 孝央
- 藤田 有紀
- 藤原 舞子
- 船本 清司
- フランツ・フォン・バイロス
- 本荘 正彦
- 松島 智里
- 松本 潮里
- 三塩 佳晴
- 三谷 拓也
- 三田村直美
- 宮崎 敬介
- 務川めぐみ
- 村川荘兵衛
- merino
- 安元 亮祐
- やちだけい
- 山田 喜代春
- 吉田 然奈
- 若月 公平
- 若月 陽子
- 渡邊 加奈子
- 渡邉 幹夫
- 渡辺 裕司
- Books
グループから探す
- 幻獣と巨木 齋藤僚太・西村沙由里 展 2024.10.30(水)〜11.9(土)
- 木口木版による 林千絵の小さな文学館 2024年10月5日(土)〜10月26日(土)
- 林千絵の木口木版画「よみせの情景」
- 夢と現 崇拝する女性像を描くふたり 青山 幸代 ・ 三谷 拓也 展 2024.9.4(水)〜9.14(土)
- 永遠日 eterniday said cornell 高松ヨク展
- 透きとおる 7 高橋 亜弓 個展 2024年6月20日(木)〜6月29日(土)
- Twilight 伊豫田 晃一 豊永 侑希 ふたり展
- 花の精霊たちへ 長野順子 銅版画展 2024年5月8日(水)〜5月18日(土)
- ーやすらぎー 銅版画とパステル画 小池 結衣 個展 2024年4月3日(水)〜4月13日(土)
- 猫と動物たちの”うふふ”なくらし 寺澤智恵子 銅版画展
- 春の女神展 2024
- 宇宙の原形、人体のうちとそとを描く 亀井 三千代 展 2023年12月8日(金)-12月21日(木)
- 林 由紀子 銅版画手彩色 作家オリジナル コラージュ ヴィンテージ額入作品
- 銅版画
- 木版画
- 木口木版画
- メゾチント
- 書籍
- 小池結衣 ブエノスアイレスのマリア シリーズ
- 豊田泰弘 油彩作品
- 多賀新 魚シリーズ