伊藤尚子 /  Naoko Ito
 
Mon bouquin(僕の本)

 

リトグラフ
イメージサイズ 10×10cm
シートサイズ 21×25.4cm
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伊藤尚子のコラム
5

 

様々な教え子達と


 

 

 2年前に近畿大学を定年退職して、今は関西大学の文学部大学院の西洋美術史を専攻して

いる人達に版画技法を教えています。

学生は普段論文を書いている人たちなので、絵が描けるわけではない。機材や道具は何も

ない。材料費もそんなに取るわけにもいかないという殆どサバイバル状態。なので、例え

ばパスタマシンを版画プレスがわりにする。要はパスタにしろ版画にしろ、原理として

挟んでぎゅーっと絞り出せばいいわけで、意外と刷れるんですパスタマシン。

普段、研究ばかりしている人たちは、実技が楽しいようです。幼稚園児の様に嬉々として

作っています。

 

以前土曜の午後、社会人むけ漆教室を近畿大学コミュニティーカレッジで10年以上して

いました。皆さん、学部の若い学生よりよほど熱心。

大学で古典芸能の研究をしていた人が、漆が楽しくなりすぎて、その後輪島で修行して漆

作家になったり、薬品会社の重役の方が、やはり漆にはまって退職。伝統産業の学校に入

り直して、四国で漆の竹細工のお店を開業。人生いつ何が起こるかわからないのは、何と

も素敵です。

 

 海外各地でのワークショップ、学生から映画俳優さんまで様々な人々と出会いました。

でも、一番心がもぎ取られる思いだったのは、去年癌で亡くなった近大造形2期生のマモ

ちゃんの死。彼は私が教師になって2年目の学生さん。ですので、師弟というより同期の

ような感覚でした。3月のY artの個展の際、滋賀の長浜から来てくれました。「最後だか

ら会いに来たよ」。「何言ってるの?」。そして6月に亡くなりました。まだ40代。一心

寺で10年に一体建立する骨仏に入るらしいので、いつか並びの骨仏になろうと、マモの

仲間達と申し合わせています。版画ゼミ再びin 一心寺ですね。

 

学生の中から、若い大事な友人が次々できたこと。他国、他職種の友人があちこちに増えた

こと。教師冥利というのは、こういうことなのかなとつくづく思うのです。
 

(作品・文 伊藤尚子)



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伊藤 尚子
Naoko Ito 


略歴
1954年京都生まれ
1977年
京都市立芸術大学美術学部、塗装(漆工)科卒業
1979年
同大学同学部同科専攻科修了
ベルギー国立高等建築視覚芸術大学金属彫刻科
ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DES ARTS VISUELS ET D'ARCHITECTURE 及び、
王立美術学院彫刻科 RIJEKS CENTRUM HOGER KUNSTON DERWIJKS BRUSSELS 留学 (ロータリー財団奨学生)
1982年
京都市立芸術大学美術学部漆工科非常勤講師
1984年
象彦漆器(株)デザイン室デザイナー
1990年
近畿大学文芸学部芸術学科造形芸術専攻教授(2020年3月退職)
2020年現在
・日本版画協会会員・ 版画京都展実行委員会会員
・Japan Art Medal Association会員・International Art Medal Federation会員
・神戸、京都、大阪、東京、パリ、ブリュッセル等にて個展39回開催


 


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