小池結衣のコラム

「ぶれる日々」

 


ぶれず迷わず潔い。

若い時はこれがかっこよかった。

しかしこれは時に、

反省しない、視野が狭い、思考停止、を意味する。



ぶれて迷って往生際悪く生きるのも悪くない。


 



第11回

「生まれ変わり」





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第11回

「生まれ変わり」
  

 

うまれでくるたて

こんどはこたにわりやのごとばかりで

くるしまなあようにうまれてくる  

――宮沢賢治「永訣の朝」より

 

考えすぎるコラム、今回は生まれ変わりについてです。

辛い別れの時、来世で会えると思えばなんとか生きていける事もあります。人は理屈に合わないことも無理やり信じることでどうにかこうにか、生きていたりするものです。多くの宗教が生まれ変わりを説いています。人類にとって宗教は重大な弊害も持つものの、その必要性についてもやはり否定するつもりはありません。けれども、お手軽な生まれ変わり観、こういうものに私は違和感を覚えるのです。生まれ変わったら何になりたいですか?とか、自分は○○の生まれ変わりだ、という類です。

21世紀の一応先進国で、非科学的な事を漫然と受け入れる態度。ここに私は疑問を感じるのです。ちょっと考えればおかしいとわかることを簡単に信じてしまうようでは、一体どうやってデマや、陰謀論や、差別、偏見、プロパガンダ、そしてその延長線上にある最悪の結果としての戦争、そんなものを遠ざけることができるのでしょう?

ちょっと考えてみましょう。私には生まれ変わりという概念自体、自分が、人間が、特別であると思う結果のように思えてなりません。生命についてはわからないことだらけである以上、生まれ変わること自体を今の科学が明白に否定できるわけではないでしょう。けれども、なぜ人間だけが生まれ変わると思うのか。ここに私は傲慢さを感じるのです。もちろん、動物に生まれ変わるとも聞きます。それこそ、人間の関心領域の狭さを感じます。その動物とはつまり、犬や猫や、動物園にいるような動物の事でしょう。地球上の生物の中で、人間や、人間が認識する動物など、大海の一滴でしかありません。例えばスプーン1杯の土の中には数億の微生物が棲んでいると言われます。もし生まれ変わるなら、確率的に前世も来世もほぼ肉眼で見えない微生物でしょう。

もちろん、科学的であろうとするなら常に自説の正しさを疑うべきです。一人の人間の腸内には千兆とも言われる腸内細菌が棲んでいます。最近の研究では、腸内細菌が人の精神状態を左右しているそうです。そのような研究などなくとも、体調や身体の痛みが精神に及ぼす影響は誰もが実感するところです。例えばここで大きく飛躍してみると、私たちの考えとは、もしかすると自分一人の脳の考えではなく、腸内細菌や、脳以外の臓器細胞およびミトコンドリア一つ一つ、皮膚常在菌、感染して有害無害な細菌ウイルスその他もろもろ、そう言ったものの総意が私の考え、精神を形作っているとしたら?それならもしかすると、

私はカエサル(の腸内で一時生きていたウェルシュ菌)の生まれ変わりである。

と言うのも、あながち荒唐無稽とは言えない気がしてきます。それどころか、腸内細菌も自分の細胞もそれぞれ短期間で生まれて死ぬから、今自分の腸内にいるビフィズス菌は、この間知り合いのお腹にいたやつかも知れない。同時代に生きる自分の好きな人嫌いな人、他の生物すべて、自分の生まれ変わりと言っていいかもしれないではありませんか。

ここまで論理を飛躍させてみれば、なんと既に科学は生まれ変わりを証明していました。誰でも知るように、わたしたちの細胞は日々、文字通り生まれ変わっています。そのために私たちは、これも誰でも知るように、地球上に生きている生物の肉体である食物と46億年間地球上をめぐっている水分を毎日補給しなければなりません。呼吸によって酸素も取り入れます。地球上の私たち全ては地球上の物質を、常に身体に取り入れ排出し、共有しているのです。というわけでみなさん、結論です。皆さんは私の生まれ変わり、私は皆さんの生まれ変わりです。


(版画作品と文. 小池結衣)
 
 

 


 

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